ここまでで本州についてのLessonが終わりました。
ここからは、四国・九州・沖縄に伝わる和菓子を学んでいきましょう。
ポルトガルやスペインから伝わった菓子文化が今も残る九州地方など、本州とはまた異なった和菓子をみることができます。
四国地方の和菓子
高知県
「堅い干菓子」という意味の『ケンピ』は、高知県の銘菓です。
点心の一つにあった「けんぴん」が原形だとも考えられていますが、伝えられていく中で製法が様々に変化してきたと思われます。
現在のケンピは、小麦粉を練り、薄く伸ばしたものを細く切り、釜で焼いています。
さつま芋を揚げた『芋けんぴ』も高知県の名物ですが、この『ケンピ』が元になっているのではないかと考えられています。

香川県
色鮮やかな祝い菓子は各地にありますが、香川県には、『おいり』という嫁入り菓子が今に伝わります。
Lesson4‐2でも解説しましたが、
もち粉で作られたやわらかな食感のあられで、赤・白など5色で色付けされています。

愛媛県
タルトと聞くと、ビスケットやパイ生地の上に果物などをのせた洋菓子をイメージするかと思います。
しかし、愛媛県松山市には、カステラ生地で餡を巻いたロールケーキのような形をした『タルト』という、江戸時代から伝わる和菓子があります。
城下町として栄えた松山の藩主が長崎から製法を持ち帰り、和のテイストを加えて作ったと言われています。

徳島県
江戸時代にサトウキビの栽培が始まり、阿波和三盆糖として高品質な和三盆糖が有名でした。
今も愛媛県と共に、一部の地域で伝統的な製法を守りながら和三盆糖が作られています。
その和三盆糖を活かした干菓子や外郎などが伝えられています。

九州地方の和菓子①
福岡県
菅原道真公を祀る太宰府天満宮の門前菓子では『梅ヶ枝餅』が有名です。
この和菓子には、
「無罪の罪に陥れられ非業の死を遂げた道真公を悼み、老婆が梅を一枝と餅を供えた」
「老婆が捕らえられた道真公へ、格子越しに梅の枝先に餅を刺して差し入れた」など、
様々な言い伝えがあります。
正式な梅ヶ枝餅には、直径や厚み、生地と餡の比率など、厳しい規定が定められています。

『鶏卵素麵』という菓子を知っていますか。
今は福岡県を中心に、大阪などの一部の菓子店で作られているもので、時に会席料理の一品としても登場する南蛮菓子の一つです。
沸騰させた砂糖蜜に糸状に卵黄を落として作られ、見た目は黄色い素麵のようですが、
原料をみての通り、甘いお菓子になっています。
佐賀県
九州地方は、今も南蛮菓子が色濃く残っている地域です。
佐賀県には、伝わった当時の原型に近い『丸ぼうろ』が銘菓として残っています。
ボーロとは、ポルトガル語で菓子の意味ですが、日本では、小麦粉・砂糖・卵などを混ぜた生地をカステラ用の釜で焼いたものを指します。

過去の文献によると、様々な形のぼうろがあったことが伺えますが、王冠のような形をしていたと考えられる「花ぼうろ」は、あまり見かけることがなくなってしまいました。
ただ、その懐かしい味わいは、今も人々に愛される味で、そば粉を用いた京都の「そばぼうろ」や、子どものお菓子としてよく見る「たまごぼうろ」なども作られ続けています。
長崎県
『カステラ』は室町時代、長崎港に上陸したポルトガル人によって伝えられた南蛮菓子です。
伝わった当時のものから、より日本人好みに改良されてきたことが見て取れます。
このカステラは宣教師たちが布教活動に使ったり、徳川家康などに献上されたという逸話が残っていたりと、日本の歴史にも深く関わってきた和菓子だといえるでしょう。
