近畿地方の和菓子②
兵庫県
饅頭の中身は、甘い餡だけではありません。
広大な塩田を開拓した赤穂藩があった現在の兵庫県には、『塩味饅頭』という饅頭があります。
もとは、赤穂の海に沈む夕日をイメージして作られたため「汐見まん志う」の名でしたが、
餡に赤穂の塩を用いたことから、『塩味饅頭』へ変更したそうです。
うっすらと可愛らしいピンクの求肥で黄身餡を包んだ『玉椿』は、姫路藩主と徳川家の姫との婚礼用に作られたことが始まりです。
椿は「長寿」の象徴であり、この藩主の一族が久しく栄えるようにとの願いが込められています。
奈良県
和菓子作りに欠かせない材料の一つである『葛粉』ですが、奈良県で作られる『吉野くず』は全国的にみても有名です。
深い山々が連なる吉野地方の地形は、田畑を作りづらかったことから、その土地の人々は身近な植物の根などを加工して食べるようになりました。
その中で生まれたのが、上質なでんぷん源である葛粉でした。
葛饅頭をはじめ、今も様々な和菓子に使われています。

また、奈良時代に伝来した唐菓子の一つに、餃子のような形をした「ぶと」というものがあります。
奈良県にある春日大社では、この「ぶと」を神饌菓子としており、これを模して作られたものが、餡ドーナツのような『ぶと饅頭』です。
中国地方の和菓子
島根県
ジンジャークッキーやジンジャーブレッドなど、生姜風味の菓子は外国でも人気ですね。
日本にも、昔から生姜の絞り汁と砂糖を合わせて固めた『生姜糖』というものがあります。
島根県特産の出西生姜の汁と砂糖を煮詰めて作るもので、藩主に献上されていたこともあるようです。
また、島根県では、しっとりとしたカステラ生地でこし餡を平たく巻いた『源氏巻』という和菓子も有名です。
生地に包まれた餡が紫がかって見えることから、源氏物語に出てくる若紫の和歌にちなんで、その名がつけられたという説があります。
この和菓子の誕生は、源氏の流れをくむ津和野藩三代目藩主が
勅使接待役を命じられた際のいさかいを当時の家老が源氏巻とよんだ菓子と小判を送り治めた、
という話にあるとも言われています。

岡山県
馴染みのある昔話の一つに「桃太郎」がありますね。
桃太郎と言えば、『きびだんご』が思い浮かびます。
きびだんごは、きびの採れるところではどこでも作られていたようですが、
岡山市内にある吉備津神社に祀られている「大吉備津彦命」が桃太郎のモデルと言われており、
江戸時代にはすでに「日本一のきびだんご」として、吉備津神社のきびだんごが売り出されていたという記録が残っています。

広島県
秋に色付き、艶やかな景色を見せてくれるモミジの名所が広島県にあります。
県の木にも制定されているモミジの葉の形をした型で焼いた『紅葉饅頭』は、
今では広島銘菓として全国的に有名になっています。

山口県
初代内閣総理大臣の伊藤博文が口の中でふわりと溶ける感じを、まるで春の淡雪を思わせる
と絶賛し、その名がついたと言われる『阿わ雪』は、卵白・寒天・砂糖のみで作られるお菓子です。
山口県の老舗で一子相伝で受け継がれる銘菓は、歴代の天皇などにも献上され、県を代表する和菓子となっています。