Lesson7-3 和菓子の世界を広げた南蛮菓子

それまで主に植物性の材料を使って作っていた日本人に伝来した、
卵や多くの砂糖を使った南蛮菓子は、その後の菓子の発展に大きな影響を与えました。

この時から徐々に菓子は甘いもの、という認識が広まっていったといえます。
その南蛮菓子について、詳しく種類を見ていきましょう。

南蛮菓子の種類

以下が代表的な南蛮菓子です。

カステラ

カステラスティリャ地方から伝わったという説が有力です。
日本人の好みに合うよう、伝来時にはなかったと思われるしっとり感を出したりと、独自の変化を遂げてきました。

金平糖

ポルトガル語のコンフェイトを漢字にしたものといわれています。
Lesson6でも登場した金平糖も、代表的な南蛮菓子です。
現在では、完成までに2週間ほどかけ丁寧に作られています。
ケシの実やいら粉、砂糖を回転する釜にいれて煮溶かし、砂糖が再結晶する力を利用して、ツノを作ります。

ぼうろ

ポルトガル語のケーキを主とする菓子を意味する言葉に由来しています。
小麦粉・砂糖・卵・牛乳などを丸めて焼いたものをさします。
伝来当初は、卵を使った記載がなく、今のものとは味わいが異なったかもしれません。
現代では、そば粉が入った京都のそばぼうろ、卵を多く使ったやわらかな食感の丸ぼうろ、乳幼児のおやつとして人気の卵ぼうろがあります。
素朴なおいしさが、今なお人気の和菓子です。

有平糖

ポルトガル語で砂糖菓子を表すアルファロアを漢字で表したものといわれています。
砂糖と水飴を合わせて煮詰め、色付けをして様々な形に作られます。
見た目も華やかで美しいことから、現在でも、茶席の干菓子や雛菓子、お祝い事の時などに用いられています。 

鶏卵素麵

卵の糸を表す、フィオス・デ・オボスというポルトガルのお菓子が原形といわれています。
日本では、福岡県などの一部の地域で作り続けられていますが、目にすることが少ない南蛮菓子です。
沸騰した砂糖蜜に卵黄を糸状に流し入れて、麵のような形に作ります。
最初は全卵を使っていたようですが、いつしか卵黄のみ用いることが主流となりました。

かせいた

Lesson5の熊本県のところで登場した、このかせいたはマルメロを砂糖煮にして固めた、
羊羹のような菓子です。
現在では、マルメロが入手しづらいため、カリンが使われています。

ひろうす

現在のがんもどきの元となった南蛮菓子です。
小麦粉・牛乳・卵を混ぜた生地を油で揚げたヒリョウスが、のちに米粉ともち粉を練り合わせた生地になりました。
江戸時代になると、それは豆腐に野菜などを混ぜて揚げる「飛龍頭(ひりょうず)」(ひろうす・がんもどき、ともいう)となり、南蛮菓子と豆腐料理の2種類が存在しました。
しかし、江戸時代の中期頃から、南蛮菓子のひろうすは見られなくなっていき、がんもどきが今も残っています。

カルメラ

カルメロやカルメイラ、またはカルメ焼きとも呼ばれます。
卵白と水を白砂糖に入れて煮詰め、火からおろしたらすりこぎですり、泡立てて作るものは、主に細工菓子として用いられます。
一方、卵白をほとんど使わずに赤ザラメに重曹を入れて膨らませたものは、屋台などで売られ、駄菓子として広く知られています。


このように実は、今も私たちの身近にある南蛮菓子。
素朴なものから、特別な席で用意されるものまで、
長い時間をかけてそれぞれに発展してきたことがわかりましたか。

歴史や由来を学んでから食すと、現代に残る南蛮菓子も趣深くいただけることと思います。