Lesson5‐4 中部地方の和菓子①

次に、澄んだ空気と水に恵まれたイメージの中部地方についてみていきましょう。

中部地方の和菓子①

新潟県

新潟県は、越後平野があり、豊かな自然と信濃川の水に恵まれ、有数の米どころです。
そのため、米や米を使った菓子作りが盛んです。

新潟県で有名な『笹団子』は、もち米と蓬の生地で小豆餡を包み、笹の葉で巻いたお団子です。
特に、県の北部で作られることが多く、南部では、つきたての白もちを笹で巻いた『笹もち』が多く作られます。
端午の節句や田植えの時期に作られてきました。
もともとこれらは、庶民が保存食で食べていたものでしたが、戦国武将の上杉謙信が、
笹の抗菌作用に着目し、戦場に行く際の食料として作らせたと言われています。

その他、今ではあまり見かけなくなってしまいましたが、新粉生地で作られる細工菓子の『新粉細工』は、今も新潟県十日町の行事で用意されています。

石川県

新年の縁起物として、石川県のある地域では、米粉の生地を羽根つきの羽のような形にして、中に占い紙を入れたものが『辻占』という名前で売られています。
外国でみられるフォーチュンクッキーは、この辻占が原形と言われています。

日本で古くから伝わるお菓子が、このように世界に広まっていくのは、嬉しいことですね。

さらに石川県では、加賀藩主の前田利家が千利休の直弟子であったことから、
特に加賀では茶の湯文化が栄え、美しい和菓子文化が受け継がれています。

福井県

水羊羹といえば、夏に食べられるイメージが強いですが、福井県では、冬の銘菓として有名です。
昔、家とは別の場所に住み込みで働く丁稚奉公というものがありました。

その丁稚奉公から年末に帰省した者が、持ち帰った小豆で作った丁稚羊羹が始まりという説もありますが、日持ちしないため、気温の低い冬によく食べられているそうです。

若狭葛は、日本三大葛の一つです。
そのため、葛羊羹や葛まんじゅうも福井県の名産として知られています。

また、福井県は日本有数の絹織物の産地として有名です。
羽二重」とは、やわらかくてつやのある絹織物で、最上級とされています。
この羽二重のように、なめらかな求肥もちを『羽二重餅』と呼び、絹織物と共に名物となりました。

富山県

薄氷』という、氷のような口溶けのお煎餅があります。
もち米の生地を、一枚一枚不規則な形に切り出し、和三盆糖を塗り、初春の水田に張った薄氷が割れた美しい風景を表現しています。

加賀藩前田家にも称賛され、徳川将軍家にも献上されたという由緒ある和菓子です。

山梨県

『あべかわもち』というと、静岡県を思い浮かべますが、山梨県内各地では、
お盆につきたてのやわらかい餅に黒みつときな粉をかけて食べる『あべかわ』を作り、
お供えする風習があります。
水田地帯では、お盆に限らず、田植えや田植えが終わった時期にも作り、豊作を祈る習わしがあります。

山梨県では、甲州街道が整っていたことから、江戸との交流も盛んに行われ、
和菓子の文化も大きく発達したと考えられています。