暑い日が続き、夏真っ盛りの8月。
多くは夏休み期間中であり、花火大会や夏祭りなど、楽しい催しことが多くありますが、暦の上では、早くも立秋が訪れ、秋になります。
そのような季節の和菓子は、どのようなものがあるでしょうか。
さっそく見ていきましょう。
8月 葉月
「土用」と聞くと、丑の日に鰻を食べることを思い浮かべる方も多いと思います。
この土用とは、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間をさす言葉で、実は夏に限ったものではありません。
しかし、夏のイメージが強いのは、精のつく食べ物を食べて暑い夏を乗り切ろう、という
古来から続く習わしによるところが大きいでしょう。
土用の入りは7月下旬となりますが、立秋まではその期間となりますので、この章で詳しく学んでいきたいと思います。
土用に食べられる和菓子とは
土用の最初の丑の日に、鰻を食べるという習慣ができたのは、江戸時代後期のことといわれています。
奈良時代から、鰻を食べると精がつくとされ、食べる風習はあったようですが、
この土用の丑の日と鰻を結びつけたのは、江戸時代の蘭学者・平賀源内だったともいわれています。
そして、この鰻と並んでよく食べられていたものが土用餅です。
おはぎのような、餡で包んだ丸い餅をさし、「土用牡丹もち」や「土用のはらわた餅」と呼ばれることもありました。

小豆は栄養価も高いことで知られており、餡の甘さもエネルギーとなることから、滋養がつくと考えられていたようです。
そのため、当時は暑中見舞いの品としても重宝されました。
江戸時代には、全国各地にこの習慣が広まっていたと思われ、茶会でも小豆餅がふるまわれたという記録も残っています。
京都では、土用の入りの日に用意することが慣例ですが、地方によって食べる日にちは様々あるようです。
また、地域によっては、餡ではなくきな粉をかけたり、草餅にするところもあります。
先人からの知恵を生かして、土用餅で暑い夏を乗り切りたいものですね。
続いて、この季節に多く作られる和菓子を見ていきましょう。
8月のモチーフ
暑い日が続く8月には、見た目にも涼しげな葛や錦玉羹を使った和菓子が人気です。
葛饅頭は、葛粉に砂糖などを混ぜて作った生地で餡を包んだものです。
中に包んだ餡が透けて見える様は、照りつける太陽の下でも涼を感じられる一品ですね。
その他、葛を使った夏の定番和菓子には、葛切りや葛焼などもあります。

錦玉羹は、寒天に水飴などを溶かして、型に流し固めた和菓子です。
中に羊羹や練切で作った金魚のモチーフのものを浮かべるなど、こちらも夏の風情が感じられるものが多くあります。

この時期は、朝顔やほおずき、枇杷を模した和菓子も人気があります。
夏休みに育てた記憶がある方も多い朝顔は、私たちにとても身近な花ですが、
源氏物語の登場人物にもその名があり、和菓子の菓銘にもなるなど、
高貴な品を感じさせる花でもあります。
枇杷も、初夏に実が熟すもので、和菓子の意匠になります。
かつては実を食すことはなく、乾燥させて細かくした葉が暑気払いの民間薬として人気があったと言われています。
今現在多く見られる実が大きな枇杷は、幕末頃に中国から伝わったとされています。

夏といえば、夏祭り・縁日が外せません。
江戸時代に縁日で大変な人気を誇っていたもの。
それは「新粉細工(しんこざいく)」です。
現在は、高度な技術を受け継ぐ新粉細工師が少なくなっており、なかなか見かける機会も少なくなってしまったものですが、昭和30年代頃まで、長く愛されてきたものでした。
新粉生地に鮮やかな色を付けて、花や鳥、果物などを細かな部分まで丁寧に模した新粉細工は、
飴細工と肩を並べ、子供たちからも大人気だったようです。
縁日だけではなく、行事の時に用意する地域もあります。
代表的なところでは、新潟県の節季市です。
別名をチンコロ市といいます。
その他、旧暦8月1日を八朔といい、香川県で行われる男児の健やかな成長を願う馬供句でも、新粉細工の馬を贈る風習があります。
そして、8月半ばにあるお盆は、和菓子とも繋がりが深い行事といえましょう。
お盆があるこの時期は、菊や蓮を模った和菓子が多く見られます。
八朔やお盆については、Lesson4でも詳しく解説していきますので、そちらでもしっかり学習しましょう。
