Lesson2‐3 基本的な和菓子

ここからは、代表的な和菓子について見ていきましょう。

皆さんがよく見たり食べたりしている和菓子の特徴、そして簡単な成り立ちなどを解説していきます。

羊羹(ようかん)

中国から伝わった点心の一種で、伝来当初は、羊の肉を固めたものを入れた汁ものでした。
肉食を敬遠していた当時の僧侶たちが、植物性の食材を使って似せて作ったことが始まりです。

後に汁が除かれ、現在の形になりました。

もともとは蒸し物でしたが、寒天の発見により、現在多く見られる煉り羊羹が誕生しました。
また、水分量を多くしのど越しをよくした水羊羹も作られるようになりました。

羊羹が竹の皮で包まれているのを見たことがある方も多いでしょう。

これは、竹の皮に滅菌作用があるためです。
現在は、竹の皮を模した紙などで包まれていることが多いですが、伝来当時を思い起こさせるものですね。

饅頭(まんじゅう)

羊羹と同じように、中国から伝わった点心の一種とされています。

当時、砂糖は高価なものであったため、今のような甘い餡ではなく、
おやきのように野菜を煮たものなどが入っていたのではないかと考えられています。

饅頭には様々な種類がありますが、その名前は
材料が由来になっているもの(例:薯蕷饅頭・そば饅頭など)
形状が由来になっているもの(例:朧饅頭・薄皮饅頭など)
そのほか場所やゆかりのある人物が由来になっているものがあります。

なぜ、饅頭の字には『頭』という字が使われているのでしょうか。

その答えは、饅頭の起源にあります。

昔、諸葛孔明が戦の帰りに川を渡ろうとしたときのこと。
その川に住む神の仕業で波が荒れ狂い渡れなくなってしまいました。
どうすればよいのかと近くの住人に尋ねたところ、人の首を49人分用意して捧げれば鎮まると言われます。

しかし、犠牲を出したくない孔明は、小麦粉を持ってくるよう指示し、それで人の頭に似せたものを作り、川に捧げました。
すると、荒れた川は静けさを取り戻し、無事に川を渡ることができた、というお話です。

このことから、饅頭は神に捧げる神聖なものとなりました。

現代でも、おめでたい日に食べたり、お供えものとして使われているのには、このような理由があったからなのですね。

餅(もち)

餅の歴史は大変古く、祭りや神へのお供え物として作られたと言われています。

『もちい』と呼ばれ、様々な年中行事や儀礼で使われていたことが文献などからも伺えます。

そのため、各地には古くから受け継がれる、様々な種類の餅があるのです。

また、もち米から作るものだけでなく、道明寺粉で作る桜餅や蕨粉で作るわらび餅、葛粉から作られる葛餅も、広く餅菓子として分類されています。

餅は、もともと保存食として考え出されました。

米は生のままでは食べられず、かといって一度炊いてしまうと保存が難しくなってしまいます。
そこで、米を搗くことを思いつきました。
餅にすることで、ご飯よりも長持ちさせることができたからです。


餅には、丸餅と四角い餅がありますね。
この形にも、実は意味があります。

地域によって多少異なりますが、お雑煮に入れるお餅は、丸いものが多い傾向があります。
これは、『完全』を意味する丸い形が、神様にお供えするものとされていたからです。

四角い餅は、江戸時代に人々が各家庭で餅を搗かずに餅屋に頼むようになったためできました。
形が揃う四角い餅が、手間を省くために作られるようになったといわれています。

求肥(ぎゅうひ)

中国の『牛脾』という食べ物をもとに、京都で作られたと言われています。

白玉粉と水飴を使うことにより、餅に比べて固くなりにくいため、大福などに使われることが多いです。

求肥がどんなものか尋ねられた際には、『あんみつに添えられているお餅みたいなもの』というと、
より分かりやすいかもしれません。

練切(ねりきり)

生地は、水分を飛ばした白こし餡に求肥や寒梅粉を練りこんだものです。

または、餡と薯蕷の生地を合わせる場合もあります。

粘土のようにしっかりとしてかたちが作りやすく、きれいな色のぼかしも楽しむことができます。
そのため、練切を使って、季節に合わせた様々な意匠が作られています。

似たものに、『こなし』があります。

こなしは、白こし餡に小麦粉などを混ぜて蒸し、揉んで作るため、このような名前がついたといいます。

どちらも、茶席の菓子としてよく用いられます。
見た目では違いが分かりにくいですが、風味が異なります。

この違いが舌でもわかるようになったら、あなたはかなりの和菓子通!といえるでしょう。