今学んでいるLesson4では、様々なお祝い事と和菓子の関係を解説してきました。
最後のページでは、故人を偲ぶ行事と和菓子について学習していきます。
彼岸
故人を偲ぶ行事として、春と秋の彼岸があります。
お彼岸とは、それぞれ春分の日と秋分の日を中心に前後3日間、計7日間の期間をさします。
このお彼岸の語源は、サンスクリット語の「波羅蜜多(パーラミタ)」で、仏教用語では「彼岸(パーラム)」「至る(イタ)」の意味を持ちます。
春分の日と秋分の日は、太陽が真東から真西へ動く日で、
西の彼方に極楽浄土があるとされている仏教において、
この世(此岸・しがん)とあの世(彼岸・ひがん)が最も通じる日と考えられてきました。
そのため、故人を偲ぶ日となったといわれています。
お彼岸と言えば、ぼた餅とおはぎが思い浮かびますね。
どちらも同じものを指しますが、春は牡丹の花から『ぼた餅』、秋は萩にちなんで『おはぎ』と呼ばれています。
一方、材料が主にもち米の場合に『ぼた餅』、うるち米が多いと『おはぎ』とする説もあります。
また、餡にも違いがみられます。
基本的に、春に食べられるぼた餅はこし餡、秋に食べられるおはぎは粒餡で作られます。
これは小豆の収穫時期に関係しています。
小豆は秋に収穫されるため、収穫したての皮が柔らかい時期は粒を活かした粒餡を使います。
一方、春のお彼岸では、貯蔵していた小豆を使用するため、硬くなった皮を取り除いてこし餡を用います。
同じものでも、時期により呼び方や豆の風味の味わい方を変える、先人の知恵を感じさせますね。

葬儀
亡くなった人を供養するために行われる葬儀にも、関わりの深い和菓子があります。
葬式の返礼品として用いられていたものが、「葬式饅頭」です。
今では一般的である饅頭も、砂糖が貴重品であった時代には高価なものでした。
そのため、故人の財産の一部を饅頭に換え、感謝の気持ちを表すものとして、
参列者に配ったことが『葬式饅頭』の始まりとされています。
また、もう一つ仏教的な考え方で、財施をする行為だという場合もあります。
故人が残した財産は、物欲が絶てずため込んだものなので、亡き後には世間へお返しして、
成仏できるようにしよう、という考え方です。
この葬式饅頭も、地方により特色がみられます。
北海道では、「中華まんじゅう」が振る舞われます。
でも、これは一般的にイメージする中華まんじゅうではありません。
どら焼きに近いもので、焼いた生地に餡を挟み、半月型に折りたたんだものになります。
関東では「春日饅頭」や「緑白饅頭」があります。
春日饅頭は、表面にシノブヒバの焼き印を押した小判型の饅頭で、しのぶ饅頭、ひば饅頭ともよばれます。
緑白饅頭は、抹茶で色づけした緑色の皮と白い皮の饅頭がセットになったものです。
一方、関西では白と黄色の饅頭が配られます。
また、饅頭を蒸した後に表面の薄皮を剝がして表面をおぼろ状にしたおぼろ饅頭が配られることもあります。
特徴的なのは、沖縄県や福島県の一部です。
90歳を超えての葬儀の場合、長寿を全うしたお祝いとして紅白饅頭を配ります。
葬式饅頭と同様に、供養をしてくれた人へ配る供養菓子には、
羊羹や煎餅など、日持ちのするものを選びましょう。

お供え物と和菓子
最後に、日々の供養として、仏壇へのお供え物について解説したいと思います。
お供え物の基本は、「五供(ごくう)」といい、「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」があります。
「飲食」のお供え物で重んじられているものは、順に、仏飯・お餅・お菓子・果物となっています。
お菓子の中では、落雁や最中、羊羹やおはぎ、どら焼き、生菓子などがお供え物として好まれているようです。
和菓子に限らなければならないということは決められていませんが、これまで学習してきたことを踏まえ、お供え物を選んでみるものよいかと思います。
このお供え物は、ご先祖様の食べ物ではなく、日頃の感謝を伝えるためのものです。
そのため、お供えしたものは下げた後で、仏様の力が宿ったありがたいお下がりとして、いただくことが好ましいとされています。
