Lesson4‐3 子の成長を願う行事と和菓子

子供の健やかな成長を願う行事は、その命をお腹に宿した時から始まっています。
今回のページでは、妊娠から出産、そしてその後の子供たちの成長を祝う行事と和菓子について学んでいきます。

節目に行われる数々の行事に登場するのはどのような和菓子でしょうか。
さっそく順番に学習していきましょう。


帯祝い

妊娠後、最初に行われる行事として思い浮かべるものは、帯祝いでしょう。

一般に妊娠5ヶ月目、地域によっては妊娠7ヶ月目の戌の日、9ヶ月目の酉の日に、腹帯を巻く風習です。
いずれも、多産でお産が軽いとされる干支に由来しています。

この日、各地では様々なかたちで安産祈願を行います。

いくつか例を挙げましょう。

滋賀県では、小さな命を授かった福をお裾分けする意味の『はらみ餅』を親戚やご近所に配ります。
柔らかいお餅はお母さんのお腹に、中の餡は赤ちゃんに見立てているといいます。

石川県でも、安産を願って『ころころ餅』を配ります。
こちらは、出産1ヶ月前の戌の日に行われます。

ほんのり塩味がついたシンプルな白いお餅を、産婦の実家から嫁ぎ先に贈り、その後ごく近しい身内に配られます。
数は奇数が一般的で、「ころころ(5656)」のゴロに合わせて、11個入りのものが多く用意されます。

ころころと器量のいい赤ちゃんが生まれますように、との願いが込められており、
このお餅は赤ちゃんを表しているため、やけどをしないように決して焼いて食べてはいけないといわれています。

お餅のかたちから赤ちゃんの性別を占うこともあったようです。

横須賀市には、妊娠5ヶ月目に、仲人や親戚に配る『帯締め餅』の風習が今も残ります。

京都市のわら天神宮は、安産の神として木花開耶姫命が崇められています。
ここでは、毎月戌の日・9日にうぶ餅茶屋が開かれ、『うぶ餅』が振る舞われます。
うぶ餅は、こし餡と甘納豆を混ぜた餡を求肥で包み、きな粉をまぶしたものです。
甘納豆が使われるようになったのは、小豆は栄養価が高く厄を祓うといわれており、産婦の健康を考えてのことといわれています。

その他、各地で紅白の落雁を授与する神社が多くあります。

いただいた落雁の色で性別を占ったり、家族で分けて食べたりと、みんなでお祝いします。

現代とは異なり、子供の死亡率が高かった昔は節目ごとに無事の成長を祝う行事が行われました。

その他の行事をみてみましょう。

三日祝い

生後3日で行う行事に、三日祝いがあります。

生まれてすぐに亡くなってしまうことも多かったことから、生後3日目も大切な節目と考えられていました。
生後3日間を無事に過ごせると、その後も元気に過ごせると考えられてきたからです。

この時に、初めて袖のある産着を着せる「産着の祝い」も行われることが多いです。

またこの日、主に関東では邪気を払うと言われる小豆を使ったぼた餅を用意します。

これは「三つ目のぼた餅」と言われ、食糧が十分でなかった昔に栄養が必要な母親のために滋養がある大きめのぼた餅を用意したことが始まりとされています。
またこの時期に、一部の地域では出産の報告も兼ねて、近所にぼた餅を配る風習が今でも残っています。

これは、第1子が生まれたときのみ行い、第2子以降は行いません。

小豆と餅は、滋養強壮効果があると言われるため、出産後の母親にも良いと考えられていました。

お七夜

平安時代の貴族は、出産当日を初夜、3日目を三夜、5日目を五夜、7日目の七夜、9日目を九夜といい、奇数の日に産養いの儀を行っていました。
現在に残るのは、先ほど解説した三日祝いとお七夜だけになりました。

それまで生後間もない赤ちゃんを見守っていた産神が帰ってしまうといわれる生後7日目、
子供の成長を確かめる行事が「お七夜」です。

この日までに命名し、その名前を披露するため、「名づけの祝い」ともいわれます。

内祝いには、鳥の卵のような形をした『鳥の子餅』がよく用いられます。
この鳥の子餅は、その後の誕生祝いや七五三、そのほかのお祝い事でも用意されることが多い縁起の良い和菓子です。

初宮参り

生後1ヶ月頃に行われる初宮参りは、生まれた赤ちゃんと一緒に、地元の氏神様にお参りにいく行事です。

親戚などに配る内祝いには、紅白饅頭などが用意されます。
また、特徴的なものに、長崎県の桃饅頭桃カステラが挙げられます。
桃は古来より不老長寿の象徴であるとされたため、江戸時代中期には、親戚などに贈る風習があったとされています。

お食い初め

生後100後頃に行われるお食い初めは、一生食べ物に困らないように、との願いを込めた、一汁三菜の食事をさせる真似をする行事です。

起源は平安時代に行われていた、父親または母方の祖父が餅を口に含ませた
「五十五の祝(いかのいわい)」や「百日の祝(ももかのいわい)」といわれています。

この日にも、やはり紅白の饅頭が用意される場合があります。
赤は魔よけ、白は清浄や潔白、中の小豆は邪気を祓うと考えられていたからです。

初誕生日

現代でも多くの人が盛大にお祝いする、満1歳の「初誕生日」は、古来より盛大に祝われてきました。

餅や赤飯を用意するのはもちろんのこと、今でも一升餅を背負わせる風習は各地でみられます。

地域によっては、背負わせるのではなく、紅白の鏡餅を踏ませたり、足形の紅白餅を用意するところもあります。

形は様々ですが、子供の健やかな成長を願う大人たちの気持ちが溢れるならわしです。